共感
親しい人(家族、友人、知人)を一人思い浮かべてください。あなたはその人のやることや言うことに「いいよ、いいよ」と、大抵肯定的ですね?それが親しいということだからです。時には「賛成はできないけど、気持はわかるよ」と、その人のやることや言うことを肯定します。相手を大目に見るこうした気持や「その人だからよい」という感情が、ここで取上げる共感です。あなたが相手に感じる共感は、その人との親しさがもとになっています
こんどは他人。あなたが、初対面の人と一緒に何かをする、例えばその人と一緒に旅行、食事やパーティー、買物、取引、打合せや会議、共同作業などです。そんな時あなたは、まず何をしますか?おそらく相手がどのような人かを知ろうとするでしょう。相手の氏名、住所、家族構成、趣味、所属や履歴などそれを知ることによって、これから一緒にすることが少しでもうまく行くようにと考えるからです。自分を隠す人とは、なかなか親しくなれないでしょう?あなたも、相手と親しくなろうと考えたら、自分を隠そうとしないことです。
相手との人間関係を良くするのに役立つ共感と呼ばれる感情は、その人と親しくなるまでは、あなたの方から進んで相手に伝えるものです。相手と親しくなる近道です。つまり、相手と親しくなるためには、あなたの方から共感を示すことが必要です。
共感は「おっしゃるとおりです」と同感するのとは違います。相手の言うことやすることが、たとえあなたの考えとは違っても、相手がそれを言ったりしたりする「その気持はわかる」と伝えることです。
共感を伝えるとは、相手が今何を感じているかを想像して、それを口に出して伝えることです。そのためには質問などして、聞き手になるのです。何を聞くかといえば、それは相手の言っていることの背後にある感情です。
いろいろな言い方がありますが共通するのは、相手の答の中にある感情(喜怒哀楽)に働きかける言葉を使うことです。「困ったことですね」、「嬉しいでしょう」、「少し不安ですね」、「楽しみですね」、「いらいらしますね」などは、相手の感情(喜怒哀楽)に働きかける言葉です。得意の絶頂にいる時、また失意のどん底にいるときにその気持(感情)をわかって受け止められる相手は、何時だってその人の無二の親友になります。
そうは言っても、私たちは毎日の生活のなかで、人の言うことやすることに唐突な感じを抱くことがよくあります。でもこうした時、相手の言動に「とんでもない…」と反発し、批判的になる前に、今目にし耳にしたことを、その人の立場で理解しようと肯定的に捉える心の動きも共感です。例えば「どうしてこうするのか、こう感じるのかな…」と立止まって考えることで、あなたは少なくとも自分の心に余裕を生みます。つまり、共感は自分のためにする。自分を豊かにする面が大きいのです。
でもこのままでは「単なる精神修養」-と思う人には、おしまいに、共感は実利があるとお伝えします。共感は一方的なものではありません。こちらが相手の言うこと、することに共感すると、黙っていても相手にそれが伝って、相手からも共感の「お返し」があります。これが心理学者の伝える「心理的互恵作用」<Psychological Reciprocity>です。■