センス・オブ・プロポーション
これは毎日の生活のなかで、私たちが自分にとって重要なこととそうでないこととを 識別できることです。簡単に言えば、自分で考えたり人から頼まれたりで、いわばあなたの目の前に起ったことを「今すぐにする/後でする」を縦軸に、「必ずする/しない」を横軸にして作った、強弱のある4象限<ややこしい人は実際の線を書いてみて下さい>から選ぶことです。これは誰もがいつも頭の中でしているのですが、自分に納得の行く順序をつけて選ぶのには、一種の感覚<センス>が要ります。私がこの表現にはじめて接したのは、新渡戸稲造<「国際連合」の前身、「国際連の」の事務総長で、いま私たちが使っている5,000円札の顔>が教え子の松本重治によく話したと同氏の書いた新聞のコラムで見た時でした。
お金と同じように、われわれの持つ時間はそれ自体を取ってみれば同じ量ですが、その同じ量に質を与える<どのように使うかの>は、われわれ自身です。金銭感覚や時間の感覚のように、人間のセンスは、それがあると付加価値を生みます。同じお金でも、使い方によって値打ちが生れるのと<昔の人は「バカとはさみは使いようで切れる」と言いました>同じです。それを生かすのは人間の持つ感覚です。感覚は五感で本能的なものですから「センス・オブ・プロポーション」はもう一歩すすめて、その人に備った情報処理能力でしょう。この世は生きる値打ちがあるかなどとよく言われますが、私達に生きる値打ちを与えているのはこの情報処理能力です。
重要なこととそうでないこととを 識別できる「センス・オブ・プロポーション」は、個人生活ばかりでなく、人と人の接する社会生活質を決めるもののようです。
重要なことと言えば、誰もが自分の生理的なものはいちばん重要として優先するでしょう。空腹なら食事しますし、喉が渇けば水を飲みます
余談ですが、生理的なもののなかにも優先順位があるようです。アメリカの農場で、雌鶏を追いかけている雄鶏の鼻先に農夫が餌をひとつかみ投げると、雄鶏は雌鶏を追いかけるのをやめて餌を食べはじめました。それを見た農夫が「ああ、オレはあそこまで飢えたくねえもんだ-」と。
閑話休題。こうした感覚は、あなたが外からの情報を受取ったら、そこで自分のあたまで考える習慣で養うことができます。それには、あなたに自分が本来大事と思う生活習慣があればそれで十分です。例えば、自分の出費を記録する、借りたものは持主に返す、日誌を書く、手紙や電話に必ず返事する、他人にものを頼むときは書いたものて渡す等々です。そしてこれをもとに、目の前で何か起ったときに、短い時間でも一瞬で考える習慣を持つことです。の習慣は二十歳以上の大多数の人が持っているでしょう。
「センス・オブ・プロポーション」とは、それを身につけることによって、あなた自身の生活の質をどのように上げることができるか、なのです。
そして何より大切なのは、何が自分にとって大事か大事でないかは必ず自分の手で決めることで、それが今日このテーマを取上げた理由です。■<061010>