ストレスの時代に
現代の私たちには毎朝起きてから夜床に就くまで、あれもこれもとやることが沢山あります。その沢山のことに共通しているのは、どれもが「何時までに返事する」、「何日までに届ける」、「いつまでに行く」などと時間を区切られていて、私たちを追い立てることです。そればかりでなく、じっとしていても健康問題、職の.確保、環境問題、社会格差、食品の安全、定年後の暮し、医療過誤、対人関係、住む場所の問題、新しいファッションや生活用品の登場、子供たちの受験や就職、災害や犯罪からの身の安全と安心できる暮らしへの懸念等々、心配のタネになるニュースが次々に飛込んできます。私たちはこのようなことを見たり聞いたりするうちに、自分の中に緊張を溜め込んでいます。こうして緊張をいわば溜め込むと、私たちの多くがそれに耐えられなくなります。いわゆるストレスを背負い込むのです。そしてそのストレスもある量を超えると、あなた自身の生産性が低下します。
生産性が下るとは、自分でも気付かないうちに自分が自分でなくなることです。むやみに腹が立って怒りっぽくなり、目の前の人を責めたり、反対に弱気になって周りの人から離れて引きこもったりと、日常の周りとの関係を悪くします。物欲が抑えられなくなって、極端な消費行動や依存に走ります。こうした一見他の人から理解できないあなたらしくない行動は、ストレスに耐えられなくなった結果の行動ですから、一般に現代病といわれます。心ばかりでなく身体もこれに反応して、肩がこったり、胸苦しくなったり、めまいがしたり、胃が痛くなったり、寒さや暑さに敏感過ぎるようになったりと影響が出ます。
緊張の溜め過ぎが「生産性の低下」につながらないようにする工夫は、緊張を溜めないのがひとつと、もうひとつはある程度の緊張に耐える力を自分につけることです。前者は食べ物をよく噛んで食べる、食休みする、規則正しい生活するといった身体にとっての「養生」の部分でしょう。後者は運動して身体にストレスを与え続けることで「鍛える」部分です。体の自由がきけば生活の範囲が拡がるように、ある程度の緊張に耐える力をつけると気持ちの余裕を生みます。この緊張に耐える力を高める工夫は、身体の健康増進に比べてあまり重要視されていませんが、体の健康と同様にその方法がもっと具体的に取上げられてよいと思います。
緊張に耐える力を高めるためには、一口で言えばふだんの生活の中で、あなたが意識して開放的に行動することでしょう。周りへの警戒心を少し和らげて、見知らぬ人との交流する、ボランティアなどの新しい役割を引受ける、一人旅に出る(遠くでなく身近な場所を訪ね、そこで会う見知らぬ人と話す)、旧友と往来する、新しい趣味を持つなどが考えられますが、大事なのは、その中身でもそれを実際にする時間でも、自分で選んで決めることです。時間の使い方にメリハリをつけるために、動(身体を使う作業や散歩)と靜(アタマを使う作業やクイズの解答、読書や日記)を意識して組合せるのもよいことです。また、適度な緊張の保持のためと承知の上で、気の進まぬことをやるのもひとつの方法でしょう。<今月の”Bits & Pieces””の欄にある冒頭の句を見てください>。
緊張に耐える力を高めると、その結果は台風や地震などの自然災害の心配が少ない丈夫な建物に住むようなものです。こうすると余計な心配をしなくて済みますから、ほかの事に目が行く。つまり生活の範囲が広がると共にその質が上るわけです。
この実行は、この頃よく聞く<自分らしく生きる>ひとつの方法と言えるでしょう。■<021010>