上野義道ホームページ-高井戸だより

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NPOを対象に、「杉並行政サービス民間事業化提案制度」の説明会があった。
この制度は、現在869種ある、区の事務事業すべてを公表し、民間（NPO、企業）からの自由な提案を募集し、運営を任せるものであるとの説明が、区内外から来た約30名の出席者を相手に行われた。区当局には、この制度が区政運営の効率化を通して、目下政府が推進している行政改革の成果につながると解されているという。

冒頭、司会者が全員に向って、①「この制度を知っていたか」、②「この制度の活用を考えているか？」と２種の質問をしたのに対して、イエスと挙手回答した者は５名以下だった。このように、情報の極端な偏りが見られた参加者の説明に対する反応はさまざまだったが、「何故そうならなかったのか？」、「何を意味するのか？」など否定的な疑問の形で出された質問に対する的確な回答は、90分の時間内では、ひとつも得られなかった。
これでは「民間のできぬことをするのが、行政サービス」との納税者の常識から見て「時流におもねる極端な自由化」の一例と見られても仕方がないだろう。また、民間企業人として機能する人が含まれていない「制度検討委員会」が行政サービスに不可欠の「住民サービスレベルの維持」についてどの程度考慮したのか、疑問を持たれても不思議ではない。

聞けば新自由主義政策の先行国は、政府事業の民間への開放でサービスが、質量ともに、極端に低下した事実を理由に、次々に立ち止っているという。それに、この一年だけでも、企業の大規模な不正行為が10指に余るこの国では、多くの分野で、本来の意味での市場原理なるものが果して通用するのか疑わしい。電力、ガス、鉄道、それに義務教育といった公共事業の民営化が、今後ますます公共意識が薄れ、貧富の対立の尖鋭化00が予想される21世紀の社会風潮になじむのか、甚だ心もとない。

今の政府が先進諸外国の追う理想の後追いを続けて来た「戦後体制からの脱却」を目指すなら、この辺りももっと考慮されて然るべきだろう。