上野義道ホームページ-高井戸だより

Ｘ月Ｘ日

「去年今年貫く棒の如きもの」＜こぞことしつらぬくぼうのごときもの＞は高浜虚子（1874-1959）の句です。読むたびに人の一生が一貫したものであることを私に実感させます。毎年この句を思い出す時期は、一日一日が意識されながら過ぎて行きます。この時期とは、冬至から七草過の正月十日までの三週間ほどです。

昨年の冬至は12月22日でした。冬至には湯槽に柚子を浮かせて柚子湯に入ります。柚子湯は体が温まって風邪を引かないなどと子供の頃からよく聞かされましたが、あの香が湯殿に溢れるのが、いつの年も気持を豊かにします。
当日はまた、牛込の穴八幡神社に厄除家内安全と、金銀融通お札を受けるためのお詣りをします。これは私の祖父母の代からのわが家のしきたりで、戦中戦後長野住まいだった頃には、東京にいた祖父母がお札を受けて届けてくれていたようです。ところが昭和30年に私が大学に入ると、穴八幡宮が学校に近いこともあって俄然私の仕事になって、以来今日まで続いています。
穴八幡は冬至から節分までお札を頒けて、その期間の午前零時に来年の恵方に向けて貼ると、次の一年間家内安全・金銀融通が確かなものになります。以前は冬至のお詣りには決心が必要でした。と言うのは、受けたお札に特に効験があるとされるこの日は（今でもそうですが）近郷近在から大勢の人が押しかけるので、お札を手にするために寒風とぬかるみの境内で何時間も行列に立って待つという目に会ったからです。ところが近年はお宮もお札所を増設して、足を運べばその場であっけないほどすぐ受けることができます。こうなると天邪鬼は列に並んで待っている間に割烹着姿のおばさんたちから「あんた学生さん？若いのに偉いわねえ…」などと話しかけられ頃が懐かしくなったりします。
お札を頂いた後本殿にお詣りすると、この10年ほどはその足で近くの決まった店での夕食に回ります。その店は以前からの女主人のおばあさんが健在で、この時期に来るお客全員にお歳暮かお年玉をくれます。今年は蜜柑でした。

この頃にはまた、井頭線の沿線に住んでいる学校時代の仲間で作った「沿線会」が、忘年会をやろうと濱田山に集ります。メンバー4人のほかに、沿線以外からも参加してくれてにぎやかです。昨年は4人のメンバー全員が揃いました。

家では、外国から来たクリスマス･カードへの返事、年をまたいでからの寒中見舞の印刷原稿を書きます。本棚の整理は、買ったものを手当り次第並べる棚と読んだ後に分類して格納する棚を別にしてありますから、それらを一通り見ます。ここ数年は処分する本などを別に分ける作業が加わっています。

門松注連飾りをつけた後に来る大晦日は、仏壇や居間の簡単な掃除とカレンダーの掛けかえ位が最近の仕事です。家内はほとんど台所に籠っています。年越しの夕飯を終えると、昨年もひとしきり寝てから12時に起してもらって、午前零時に恵方に向けて穴八幡宮のお札を貼ります。後で知ったのですが、当夜は満月だったそうです。それから改めて入浴すると、湯槽で高井戸の医王寺や烏山の寺町などのいくつかの除夜の鐘を聴きます。

年が明けて、元旦は雑煮を祝い届いた年賀状を見るなどの一日、3日には家族の顔合わせでにぎやかでした。

5日から外出して、NPOの英会話のクラス＜「見る・聞く・話す米語サロン」＞で、参加の方々の今年の決心＜New Year Resolution＝「Ｘキロ減量する、毎日Ｘ分英文を読む等々」＞を聞いていました。後にいて指名された私は「一週間に３日は一時間散歩する」と。　

7日には松の内が終って注連飾りを外しました。関西では15日だそうです。今年一年が始まるぞと言う感じです。
同じ日の夕方、アメリカの大学の男子寮で、上の階に住んでいた、40余年来の付き合いの香港の百万長者の子息Ｌ君から東京に着いたと電話がありました。カナダはバンクーバーの住人です。香港からの帰途で、一週間ほど日本を見物してから再び香港に戻ると言います。バンクーバーは今年冬季オリンピックが開かれますが、その時期彼は99歳で健在のご両親と香港にいるそうです。

9日の土曜日には「特撰落語サロン」で可楽を聴いて参加の皆さんと夕食をした帰途、近くの書店に注文した「野鳥カレンダー」（日本野鳥の会）と本が届いていたので、受取って帰宅しました。■<011510>