上野義道ホームページ-高井戸だより

Ｘ月Ｘ日

３日間家を空けて旅先から戻りました。戸を開けて家に入るとそのままの服装で、すぐにやることはいつもと同じように２つで、まず家を留守にしてできなかったいくつかのことを片付けること、次に旅先で持帰ったものの整理です。
閉め切った窓や戸を開け放って、家の中に空気を入れます。裏の戸を開けたついでに、郵便受けから留守中に来た新聞や手紙を出して、食卓テーブルの上におきます。持帰ったスーツケースを開けて、旅先の買物を食料品などは冷蔵庫に入れ、コーヒーのためのお湯を沸かします。たまった洗濯物は洗濯物入れに、そしてそれ以外に持って行った衣類や履物を、それぞれの場所に。次は、今度の旅行にはPC（パーソナル･コンピュータ）を置いていったので、メールを受信することです。この間は二階と階下を頻繁に往復して、旅先の衣服を普段着に着替えることも入ります。

一段落したらコーヒーを持って二階の自分の部屋に上り、今度は自分自身のことをします。留守中の新聞や来信を読むこと、メールの返信、メモの整理をどの順序で整理するかを考えます。今度はまず新聞をひとわたり読んで、後で切り抜いて保存する記事に何時ものように、付箋を付けました。読み終った新聞は、一緒に配られた広告の散らしと一緒に、後で片付けるために部屋の隅に積みます。
来信が３通。まず開いたのは、以前の勤め先の後輩J君からの定年退職の挨拶。２番目は旧知のIさんから頼まれていた講演当日の確認と会場の案内図。もうひとつは、もう20年も前から、高校の同期生と（新制高校第６回卒業に因んで）毎月６日に長野市で開いてきた集まりの案内状。中身を見ると、あれれ、５月は休みで、６月は６日でなく、７日にやると案内。はて、最近休会が目立つぞ。会場の「二幸」のおばさんも年を取ったしなぁ…。６月は６日が金曜日なので参加するつもりだったけど。それに、同じ日の昼間に会う約束をした、４人の善光寺小町（小学校の同級生）との連絡も…、などど思案。
持って行ったカメラの中にある写真を見て、不要なものは消してPCに取り込みます。その写真を今度一緒に行った次男一家のPCに送りました。ついでに行けなかった長男と長女にも。また毎週定期便を交換する、メル友のUさんにも。
旅行中の日記の空いた日を、メモを見ながら埋めるのは、いつもよりも書き方が短くなるのは仕方がありません。ついでにメモの整理。旅先で浮かんだ、雑然としたアイデアなどもPCに入れます。予定の確認を今週分と次週分して、それについての準備の様子を確認。
このような旅の後片付けをしていると、当然ですが、こんどの旅先であったさまざまなこと、深い霧の中の散歩、ホテルや地元の人々との会話、鳥の聲や姿、冬の間に鹿に皮を食べられた木々、急斜面を駆け上がる鹿の姿、もう少しで芽吹く落葉松の下枝などを思い出します。

この後片付けは、一月くらいの長い旅でも、短い旅でも同じようです。やっていると、後始末そのものが、これから戻る日常生活の準備になっているに気づきます。つまり、このあと何をするか、そのすることにこの旅が何か役に立ったろうかなどを、雑然と考えます。
はるか以前の学生時代には、一年の三分の一はそこにいた芳ヶ平小屋（群馬県草津町）の滞在から帰って、大きな荷物を玄関の三和土に置き放しにして、そのうちにたまりかねた母に臭いなどと言われてから、しぶしぶ片付けたものです。
あの頃は、こうした後始末の習慣、つまり自分のしたことを反芻して見る習慣が身についていないで、よく言えば、目はいつも前を向いていたのでしょう。

旅から戻ると、戻ったこと自体が、自分の最前までしていたことが、これからの自分や周りにどう影響するか、関係するかなどを考える機会で、今ではそれが習慣になっています。これに気づいたのは何年前のことだったのでしょう。