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一作務・二坐禅・三看経

禅宗の坊さんに坐禅について質問していたら「でも、禅宗の坊主だって坐禅ばかりしているわけではないよ」と言われた。

禅宗が修行の中で重んじるのは「作務・坐禅・看経」の三つで、「一作務(いちさむ)・二坐禅(にざぜん)・三看経(さんかんきん)」と順序をつけて言い習わしている。大切なのもこの順番通りだそうだ。

「作務」とは毎日の生活に必要な作業をすることで、その使う時間も他の二つに比べて大半を占めるという。禅宗の寺院に行くと、庭園などの露地や植栽が見事に清掃手入れされているのが印象的だが、それはこの作務があるからだ。

「坐禅」は自由な姿勢で、さまざまな事について思いをめぐらす。「公案」などと、与えられた課題を考えることもあるが、ふつう自ら選んだことを考えることが多いようだ。

「看経」は信仰の指針である経典を読み、その内容を知識として理解し共感することだ。

「一作務・二坐禅・三看経」は、私たちの日々の生活にもヒントを与える。
まず毎日の生活に必要なことに身体を動かして作業する（作務）。
掃除は清潔な空間を作るし、スポーツは健康な体を生み出す。整理整頓は、自分の思うような生活を可能にする。身体を動かすことからどれほど多くのものが得られるか。特に、身体を動かしているうちに、ふだん思いもよらなかったことに対する興味や疑問が生まれるのは驚くほどだ。

体を動かして働いたり、人に会ったりしていると、わからないことや疑問に思うことが出てくる。その疑問に手軽な答えを求めようとせず、それについて考えることから得るものは多い（坐禅）。自分がこれまで得た知識を取り出して動員し、わからないことや疑問が起った原因や、人間関係ならば相手の立場を考えるなど、答を自分の頭で考えることには大きな意味がある。考えることがどれほど人間的な営みかは、いまさら言うまでもないだろう。

どうしてもわからないことは、書籍やインターネットで知識を求め、理解共感する（看経）。
考えることが深ければ、知識を求めるときにその焦点が絞られる（「何がわからないのかがわかる」のである）。疑問が深ければ、得た知識が強く身について離れない。
このように三つは互いに密接な関連を持っているから、生活の中でこれを実行すれば、われわれの日常にリズムを与える。またこの三つが実行されているかどうかを時々振返れば、自分の日常生活が本当にバランスのとれたものかどうかに気づくことができる。