上野義道ホームページ-「いまさら英語？」と言う人へ

威厳とは何か？

新学期や新年度を迎えて、日本中の家庭や職場に、新しい仕事、新しい地位、新しい役割を手に入れた人が大勢いるだろう。そして、多くの人がこうした新しい仕事、地位、役割をどのように果していこうかとあれこれ計画し考えているだろうと思う。

家庭でも職場でも、家族、仲間、部下、教え子それに患者など、周りの人と力を合わせて成果を得るために求められることのひとつに、あなた自身が権威を持つことがある。権威とは、大きな声を出したり、粗暴に振舞ったりと力を誇示することとは違う。だから権威は、誰もがその気になれば手に入れることができる。周りから権威があると認められた人は、共同作業がしやすいから、新しい仕事、これまでの仕事の新しい地位についた人々にとって、どのようにして権威を身につけるかは切実な課題のはずだ。

権威とは、求めに応じて必要なら説明のできることを指す。説明しようと思えば説明できること、また一歩進んで、共同作業を進める上で相手に説明を求めさせる能力のことだ。
親の権威は「なぜ人に挨拶をしなくてはならないか」、「何故学校に行くのか」などが子供に説明できるところから生まれる。先生の権威は生徒に「なぜ人を殺してはいけないか」、「私はどの分野に向いているか」などと聞かれても、それなりの（とは、答えはひとつではないと言うことです）説明ができる能力。また「なぜ会議に遅刻してはいけないか」、「何故お客さんを大切にしなくてはならないか」を説明できる職場の管理職。患者に「なぜ、医師が指示したこの生活習慣を守らねばならないか」を説明できる医療関係者などが持っているのは、権威に他ならない。

権威とは特定の答そのもの以上に、説明した相手の言動に影響を与えることのできる能力だろう。それは新しい仕事や地位、役割に付随する権力を乱用することとは違う。権力の乱用は、ある状況下での力の誇示に終る一過性のものが多い。ところが、権威は影響力を持つ点で、たとえ場所や時代が変わっても、違った場所や時代の問題を解決することだってある。権力は人を従わせるが、権威は人を承服させる。さらに承服した人が、自ら判断して行動することを助ける。なぜなら、力の誇示は従う側がその中に価値を認めにくいが、権威は成果を得るために必要な価値を示して、それを相手に認めさせるものなのだから。